「もしかして発達障害かも?」と思った時に一番最初にやるべきことは?

近年、厚生労働省のデータによると、発達障害支援センターに寄せられる相談や支援件数は年々増加しています。
特に19歳以上の支援件数が18歳以下を上回る状況が続いており、大人の発達障害への注目が高まっていることが伺えます。
このブログでは、私が発達障害を自覚し、その後どのように受け入れていったかをお伝えします。
自分が発達障害かも? だけど 

「これからどうすればよいかわからない?」「相談相手がいない」「病院にいくのは嫌だ」

そのような悩みを持っていらっしゃる方の参考になればと思います。

 

 

俺ってもしかして発達障害かも?

私が自分のことを「発達障害かもしれない」と疑ったのは、2020年の秋でした。長年慣れ親しんだ部署から新設の部署に異動となり、慣れない環境や業務へのストレスで、家族に対してイライラをぶつけることが多くなっていました。それを見かねた妻が「病院に行ってみたら?」と提案してくれたのです。

その頃、たまたま発達障害に関する本を手に取って読み進めている中で、自分が ASD(自閉スペクトラム症) の特徴に当てはまるかもしれないと思うようになりました。特に「同一性保持(変化を嫌う傾向)」や「タイムスリップ現象(過去の嫌な記憶を繰り返し思い出すこと)」といった特徴が、自分に合致しているように感じたのです。

しかし、精神科や心療内科に行くことには抵抗があった私は、ネット広告で目にしたクリニックで QEEG検査(定量的脳波検査) を受けることにしました。

診断結果とその後

クリニックでは、頭に器具をつけ30分ほどで結果が出ました。
医師からは「ASDの傾向がある」と説明を受け、診断結果の資料を渡されました。(下図参照)
そして、そのクリニックでは TMS治療(経頭蓋磁気刺激治療) を勧められましたが、この治療は保険適用外で、1回の費用が1万円前後と非常に高額でした。

治るんなら治療を受けてみようか? という考えもよぎりましたが、とても治るまで治療を継続できるとは考えられず、治療を受けることは断念したのでした。

クリニックを出るとき、私は自分が「発達障害グレーゾーン発達障害の特性があり、診断基準であてはまる項目があるものの確定診断には至らない、発達障害の傾向があるという状態)」であることはわかったものの、この先どうしたらよいのか分からず途方に暮れていました。

2020年当時医師から渡された検査結果

ASDやASDの特徴であるこだわり、過敏の記述が読み取れる 

「もしかして発達障害かも?」と思った時に一番最初にやるべきことは?

ここまで、私が発達障害だと自覚するまでの経緯をお話ししました。

この経験を振り返り、「発達障害かも?」と悩んでいる方に、最初にお伝えしたいのは 「発達障害の正しい知識を持つこと」 の重要性です

 

発達障害は精神疾患ではない

発達障害に関する最も大きな誤解の1つが「発達障害は治療が必要な精神疾患である」というものです。
しかし実際には、発達障害は 「脳の特性」 によるものと考えられており、治療すべき病気ではありません。

私自身も当初は「発達障害=精神疾患」と思い込んでいました。

その結果、高額な治療を提案されて「この治療を受けると治るのでは?」と心が揺らいだこともありました。

しかし、今は違います。

発達障害は病気ではなく、あくまで 「生まれ持った特性」なの です。

その理解がなければ、無意味な治療や過剰な自己否定、発達障害の偏見や差別にもつながるのです。

私はこのことは声を大にして言いたいのです。

 

ASDは少数派の特性である

発達障害の中でも、特に自閉スペクトラム症(ASD)は原因が明確に解明されておらず、治療法も存在しません。

そのため、ASDを「疾患」と捉えると、「不治の病」という誤解を生んでしまいます。

むしろASDの特性は、現代社会では少数派であるものの、進化の過程では非常に重要な役割を果たしてきたと考えられています。例えば:

  • 同一性保持(変化を嫌う傾向):環境の変化に敏感で、危険を察知しやすい。
  • 感覚過敏:外部の刺激に対して敏感で、細かな変化をすばやく把握できる。
  • タイムスリップ現象(過去の記憶を繰り返し思い出す特性):過去の体験を詳細に覚えており、それをもとに将来のリスクを予測する力。

狩猟採取の時代、人間が集団で生活し狩りを行っていた頃、これらの特性は 「集団を危険から守るための重要な能力」 として役立っていたと考えられています。つまり、ASDの特性はかつては「障害」ではなく「強み」であったのです。

 

現代社会におけるASDの可能性

変化の激しい現代では、ASDの特性が生きづらさにつながることがあります。しかし、現代においてもその特性を活かすことで大きな成果を上げた人たちがいます。

例えば:

  • スティーブ・ジョブズ(Apple創業者):新しいアイデアを追求し、世界を変えるプロダクトを生み出した。
  • イーロン・マスク(Tesla, SpaceX創業者):他にはない視点で技術革新を推進した。
  • アルベルト・アインシュタイン(物理学者):従来の常識に囚われない視点で理論物理学を発展させた。

彼らはASDの強みを武器にして社会に貢献した好例です。

ASDの障害としてよく知られているものとして、「対人関係を構築し維持することが苦手」というものがあります。

しかしこの障害は一方で同調圧力を感じることなく、独自の発想ができるという強みでもあるのです。

もし彼らが他人との関係性を気にして、同調圧力に負けていたなら、優れた業績を残すことはなかったでしょう。

発達障害の特性を生かすために

発達障害の特性は、環境や工夫次第で社会に還元することが十分可能です。

そのためには、正しい知識を持ち、自分自身の特性を理解することが重要です。

 「ネクスト・ステップ・ソサエティ」 では、大人の発達障がい者及びグレーゾーンの方が自分の特性を理解し、適切に対処できるよう学びの場や当事者会を定期的に企画しています。

発達障害は「障害」ではなく「特性」です。その特性を生かす方法を、一緒に探していきましょう。

ぜひ、私たちのイベントにご参加ください。